不渡りその後Ⅱ

破産した元商社の営業から電話が来た。


「新しい商社に再就職できましたが、これからも同じ業界でやって行く以上、旧会社のこととはいえ、ご迷惑かけてだまっている訳にはいかないので・・・」
そんな切り出しで話が始まった。
破産した元商社の社長は3代目だったとのこと。
人の気持ちを理解できないタイプですか?と尋ねると、やはり甘ったれで世間知らずなところがあったようだ。
年末には、社員一同がボーナス返上してでも再建していこうと社長と約束したはずだったのだが、
その二日後社長は失踪したこと。
売上的には前年より増えているのに、知らぬ間にノンバンクへの多額の借金があり、取立がやくざまがいの口調で乗り込んできて、
「おまえらなにも取ってねえだろうな、こちとら1億6千万円の貸しがあるんだ!」と。
数ヶ月間行方をくらましていた元社長は、債権者の提訴で裁判所の呼び出しにようやく出てきたこと。
どうやら元社長はノンバンクに踊らされていたのではないかということ。
負債額5億から6億円に対し、元経営陣の財産は合計でも1億円程度だということ。
今まで明かされなかった真実が聞けた。
最後には、
「裁判により、我々元従業員の給与は保証されますが、取引会社の方々の代金は保証されません、それを思うと非常に心苦しいのですが、これからのお付き合いで借りを返していきたいと思います。」
そう言ってくれた。
「よくミナロへ電話をくれました。 勇気が要ったでしょう?」と聞くと、
やはり怒鳴られることが多いと、中には連鎖倒産してしまう話も聞かされるそうだ。
当然債権者は怒っているし、元従業員としては黙っていればそれで済むかも知れない。
しかしそれを乗り越え、本来は元社長がするべきことを、元の従業員達が後始末をしようとするその姿勢はうれしかった。
今回は社長になってはいけない人間が社長になった時の最悪の結末だろう。
従業員、取引先を含めいったいどれだけの人に迷惑を掛けたのか。
そしてその会社はなくなった。
まっとうな従業員は、まっとうな新しい職場を見つけた。
きっとこれからはまっとうな付き合いが出来るとおもう。
さて、損したぶん稼がせてもらいますかの~
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